「なかなかうまくできないんですよね。アプリが止まっちゃうこともあって・・・」
「まぁ、1日16時間ぐらいはやらないとね。」
あまり言わないようにしている。特に、起業相談を受けてこれを言ったことは、記憶にある限り1回だけだ。
だいたいは、ポカンとされたり、無言になって表情が止まったりする。会話が途切れて、沈黙を味わう。
決定的かつ致命的で、一撃のうちにトドメを刺されたとき、普通の人はリアクションができない。
今世人を殺めたことはないが、おそらくそういうときの反応に近いと思う。
あるいは、ブラックだ、ライフワークバランスだ、という議論が頭に浮かぶのかもしれないが、その議論はあなたの会社が数十人あるいは何百人かになったときに、あなたのパートナーや部下が考えることだ。それを受け入れないなら、起業はやめたほうがいい。成功する確率は極めて小さいからだ。
しかし、たいていの場合、「1日16時間」の意味がパッとわからないために、ポカンとされることが多い。
「1日16時間」とは、1日24時間しかないわけだから、残りは8時間だ。8時間で睡眠他、生活に必要なことを行う。少なくとも7時間は寝ることをオススメしたい。残りは1時間だ。つまり、食事する間も惜しんで働くことになる。
頭の中で考えているだけでも、働いているほうにカウントしていいんじゃないか。
確かにそういう考えも正しい。食事中もトイレ中も、あるいは、夢の中まで仕事のことを考えている経営者の話しは、本屋に行けばビジネス書の中によく登場する成功者の逸話だ。
しかしそれは、少なくとも二流の経営者になってからの話しだ。これから起業するあなたに当てはまる話しではない。
なぜか。
その理由は極めて論理的かつ明解に説明できる。
ゼロから事業をおこそう、というとき、たいていは手元に何もない。
あなたが学生なら、実現する能力・技術力が足りないだろう。ネットでいえば、プログラムを書いてアプリを動かすとか、そこそこかっこよく見えるページのコーディングをするとか、事業の前提条件に見える部分で不足がある。歳と経験を重ねていくと、実現能力の比率は小さくなっていくが、それでも十分足りているという人はとても少ない。
だからといって、頼める人も普通はいない。プログラマは普通高給取りで、仕事がいっぱいある。あなたのために奉仕する時間はないだろう。
カネもない。これから起業して大金持ちになるが、いまはゼロだ。
コネもない。何の経験も実績もなく、夢を語って大言壮語するだけのあなたに、お金を出してくれる人と出会えることはなかなかない。
つまり、いわゆる経営資源といわれる「ヒト・モノ・カネ」がすべてない状態からスタートする。
あなたが学生なら、社会で働いた経験が少なく、事業を興した経験も当然ない。
あるのは唯一、行動の「量」と、その原動力となる「情熱」だけだ。
「情熱」の強さを測る方法はある。
睡眠の時間は除いてかまわないので、1日のうちに事業のことを考えている時間がどれぐらいあるか、16時間の中でどれぐらいの時間考えているかを振り返ってみる。これで情熱の強さがわかる。
実は、これは訓練で伸ばすこともできる。「1日何時間もそのことばかり考えている」という状態を、実は多くの人が受験勉強で養っている。小説やマンガなど創作物を出す仕事をイメージすれば、わかりやすい。
事業の場合、それをすることによって多くの人が喜んだり助かったりする。
その人数が多ければ多いほど、おカネがたくさん入ってきてお金持ちになる、というのがビジネスの基本だ。
しかし、「ヒト・モノ・カネ」がなく経験もないということは、問題解決能力がないことを意味する。
だから、唯一「行動量」において、人を喜ばせる存在となろう。
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