有名でわかりやすいのに、新人が企画書に使うとなぜか失敗する、生兵法に要注意のマーケティングテクニックをまとめます。
AIDMA、AISAS
広告やプロモーションに関係する記事や本にはほとんど必ず出てくる、有名な概念です。
AIDMA(アイドマ)とは、
- Attention(注意、認知)
- Interest(興味、関心)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
の頭文字をとったもので、消費者の購買行動、つまり、何かを買うときにどう思いどう行動するか、を分類したものです。
印象として、電通が提唱したように感じていましたが、実際は、1920年代に、アメリカの「サミュエル・ローランド・ホール」という方が提唱したそうです。
電通が提唱したのは、「AIDMA(アイドマ)」になぞらえた現代版「AISAS(アイサス)」です。これを広めたために、「AIDMA(アイドマ)」も有名になった、という説があるぐらいです。
「AISAS(アイサス)」とは、
- Attention(注意、認知)
- Interest(興味、関心)
- Search(検索)
- Action(行動)
- Share(共有)
の頭文字をとったものです。つまり、いまどきは、興味を持ったら普通ググりますよね、買ったらSNSにアップしますよね、ということです。
解説としてはこのページの図がわかりやすかったです。
http://ascii.jp/elem/000/000/638/638775/http://ascii.jp/elem/000/000/638/638774/img.html
「AIDMA(アイドマ)」も「AISAS(アイサス)」も、とてもわかりやすくて普遍性があるようにも見えて、つい企画書に入れたくなります。
特に、こういうマーケティング知識を学び始めてまもない新人が、自分の担当する企画書にこれを入れるケースが、企業規模の大小にかかわらずよくあります。
しかし、上司やクライアントに見せると、なぜかエラいヒトほど機嫌が悪くなり、あるいは、あてはまらない不備を指摘され、次回の会議の資料からは消えている、という状況を、何度も見てきました。
その原因ははっきりとは分析できていませんが、おそらくは、電通のような大きな広告代理店が、相当規模の大きな企業に対して、企画提案、説得をするときに有用なモデルとして出てきたからだろう、という気がしています
。世の中の企画書の大部分である、中小規模のプロジェクトにあてはめるときにすごくベンリ、ということではないのかもしれません。
3C、4P、5C
これはビジネスの分析、事業、企業の分析に関して、非常によく出てくる有名な概念です。
「3C」とは、
- Customer(市場・顧客)
- Competitor(競合)
- Company(自社)
「4P」とは、
- Product(製品)
- Price(価格)
- Place(流通)
- Promotion(販売促進)
「5C」にいたっては説がいくつもあり、
- Customer(顧客), Company(会社), Competition(競合), Collaborators(協力者), Context(背景)
- Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)、Customer’s Customer(顧客の顧客)、Customer’s Competitor(顧客の競合)
- Customer needs(顧客/市場のニーズ)、Company Skills(自社のスキル)、Competition(競争度合い)、Collaborators(協力者)、Context(背景)
などがあります。特に、3Cや4Pはシンプルでわかりやすく、何にでもあてはめられるようにみえて、ついつい使ってみたくなる魅力があります。
しかし、これもなぜか、上司やクライアントに見せると、雰囲気が悪くなり不備を指摘され撃沈する、というケースを見てきました。
ひとつは、「AIDMA(アイドマ)」と同じように、大企業が大企業に提案するときの手法だ、ということは言えると思います。
これらの概念、分析手法は、「戦略コンサル」と呼ばれる企業が、そのクライアントである大企業の、当然ながら大きな規模の事業に対する緻密な分析に使って、あるいは、それを広めたことは間違いがないようです。
これが、たとえば、これからどうなるのかよくわからないスタートアップ企業や、中小規模の小さなWebサイト企画などにむかないかもしれないことは、容易にイメージできます。
もうひとつの面として、3C、4P、5Cを使うための基礎知識の中に、生兵法で失敗することを象徴するような概念があります。それが、「MECE」です。
MECE、因数分解
「MECE(ミーシー)」とは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、要するに「もれなく、ダブリなく」という意味です。「ロジカル・シンキング」に関連してよく出てくる概念です。
これも、言葉としてはシンプルで使いやすく見えるのですが、実際に使おうとすると難しく、奥深いのです。
経営分析の場合、たとえば、「売上は何でできているか」を「MECE」に従って分解していきます。この分解する作業を「因数分解」と呼びます。学校の数学で出てきた「因数分解」と似ていますが、こちらは必ずしも数式で解くわけではなく、文系的に概念として分けていく場合もあります。
少しやってみるとわかりますが、本当に正しく「もれなく、ダブりなく」分けているのかどうか、判断するのは非常に難しいのです。初心者が1人で確認する方法は、探してみても見つかりません。だれにでもできる普遍的なできてる確認がなく、訓練と経験がないとレビューできないのです。
これは、マッキンゼーやBCG(ボストンコンサルティング)など一流の戦略コンサル、あるいはファームと呼ばれている企業の本を読むとわかります。
まず入社するのに、最高学府の最高レベルの成績が必要となります。トップオブトップのヒトが入社して、毎日毎日ゴリゴリと調査分析を繰り返しやらされるわけです。相当な実務訓練を積んでから、「MECE」「3C」などの概念を使っていることが想像できます。そして、複雑な調査結果や分析結果をシンプルにまとめることで、付加価値を出しているのです。
よって、トップオブトップの学歴でない、連日徹夜の修行も積んでいない、入ったばかりの初心者が使えば、「生兵法は大怪我の元」という言葉のとおりになることが、想像できるのです。
まとめ
生兵法に注意の超有名マーケティング技術として、「AIDMA」「AISAS」、「3C」「4P」「5C」、「MECE」「因数分解」を紹介しました。
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