最近(2018年)、「リーンスタートアップ」の続編という位置づけで、「スタートアップウェイ」という本が発刊されました。
今回は、この本をヒントにして「リーンスタートアップ」が登場した経緯、これほどまでに求められ普及した背景を考えます。
「スタートアップウェイ」 では大企業がテーマ
ゼロから作り上げるアントレプレナーと自称する著者:エリック・リースが、この
「スタートアップウェイ」 では大企業をメインテーマにしています。
「リーンスタートアップ」のネーミングは、そもそもトヨタの「リーン生産方式」にちなんで名付けたと言われていますが、そのトヨタ社がエリック・リース氏に意見を求めるエピソードが登場します。
「リーンスタートアップ」という手法が世に知られるようになったのは、2011年ごろからです。
「リーン・スタートアップ」のバイブル
エリック・リース著「リーンスタートアップ」は、リーンスタートアップのバイブル的位置づけにある本だと思います。
この本の内容を焼き直し、洗練させ、あるいは、特定分野に特化させたものが、いまでも出版され続けています。
IT・インターネット関連の製品開発、サービス作りの現場では、この手法がもはや当然の常識のように利用されています。この手法、思想がどれだけの付加価値を生み出したのか、金額では計算しきれない影響力があったと思われます。
「リーン・スタートアップ」登場の背景
では、その前はどうしていたのでしょうか。
年単位の時間をかけた製品開発
新製品開発の現場は、大企業の中にありました。最初から、おカネとヒトを投入して時間をかけなければ、新製品を出すことはできないとされていました。
わかりやすい例は、クルマの開発でしょう。
一つの車種を売り出すまでに、企画・調査から製造して売り出すまでに、4年かかると言われていました。実際に収入が発生するのは、志してから4年後、というわけです。
また、たとえば、アパレル業界、要するに服の開発販売には、2年かかるとされていました。
昨今では、2年もかかったら、その間に世の中がすっかり変わってしまいます。つまり、開発を始めた当初に、はやるだろう、売れるだろうと思い、予測して作った製品が、発売されたときにはすっかり時代遅れどころか、場合によっては非難されるような対象に変わることもありました。
最初からおカネとヒトをふんだんに投入する=企画開発に時間をかけていると、その間に世の中が変わってしまう、ということがあります。
売れるのか売れないのか、だれにもわからなくなった
さらに、売れるのか売れないのか、その予測がさっぱり当たらなくなりました。
業界により差はあるものの、はやるのかはやらないのか、受け入れるヒトがどのぐらいいるのかが、「事前には」わからなくなったのです。
いいかえると、「やってみるまでは誰にもわからない」ということがわかり始めた、と言ってよいでしょう。
お客に聞けばわかるだろう、と思うかもしれません。従来の製品開発では、ユーザーインタビューを行ったり、アンケート調査をしたりして、調査におカネと時間をかけていました。
それでもわからなくなったのです。
「お客様に聞いてもわからない」は実は古くからあった
これは、まだ見たことのないもの、新しいものは、ほしいかどうかがお客様にはわからない、ということもその要因です。
この法則は古くからあり、たとえば、鉄道が走る前は、馬が走る動力・交通手段だったわけですが、その時代のヒトに、鉄道がほしいかと聞いたらそれがほしいとこたえられるヒトは相当限られていたはずです。
電話がない時代に、電話がほしいか、と聞かれても意味がよくわからなかったでしょう。
凡人も起業して成功したい、カリスマなしの起業
また、カリスマではない、普通のヒト、凡人が優れた製品を作れるようにしたい、という願い・ニーズがありました。
過去、大企業に成長した創業者は、みなモノ作りの現場でカリスマ性を発揮しました。たとえば、ホンダの本田宗一郎、ソニーの井深大、Appleのスティーブ・ジョブス、古くはGEのエジソンもカリスマ性がありました。
つまり、カリスマが言ったとおりにやれば、お客がついてきてフォロワー(信者)になり、製品が売れていって成功するのだ、というパターンです。
しかし、カリスマは年をとり、世の中が激しく変化するようになって、情報があふれ好みが細かく分かれるようになり、売れるものが多様化しました。
カリスマから出る方針がなく、変化するためにだれもが経験豊かでない、凡人の集まりでも、がんばれば成功できる手法が熱望されていたはずです。
成功とは、お客様が望むものに一定の時間内でたどりつくことです。しかも、凡人が一生懸命がんばればできる手法、最速でたどりつけるスピードが求められました。
まとめ
「リーンスタートアップ」が広がった背景には、これらのニーズがあって、起業だけでなく大企業の製品開発の現場でも同じことが求められていたことが、大きく影響していたと考えます。
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