「X-Tech(クロステック)」のなかでも、いま注目されている「不動産テック」と呼ばれるビジネスについて、この記事ではその代表的な事例として、賃貸オフィスに革命を起こしている「WeWork」を取り上げます。
「不動産テック」の魅力と特徴
「不動産テック」の魅力と特徴について、こちらの記事でまとめています。
まだまだクローズドな領域が多く、巨大な業界にネット企業が革命を起こしていく様子を、さらに具体的にお伝えするため、代表的な事例を紹介します。
賃貸オフィスに革命「WeWork」
今回取り上げるのは「WeWork」という企業・サービスです。
上述の記事でも取り上げた、不動産テックの中心地であるニューヨークのフラットアイアン地区からスタートした企業です。
マンハッタンやミッドタウンなどの巨大で最新のビル群が立ち並ぶ摩天楼ではなく、ニューヨークのなかでもどちらかといえば中小サイズで、築年数の古いビルが多いのが、フラットアイアン地区の特徴です。
このような古いビルを、オシャレに今風に改装して使うことが、20代を中心とする「ミレニアム世代」に大ウケしました。これが「WeWork」の人気が急上昇した理由です。
しかし、日本展開が始まった現在の視点からみると、「革命」を起こしている中心点は別のところにあるといえます。
賃貸オフィスの「サブスクリプション化」
それは、一言で言うと「賃貸オフィスのサブスクリプション化」です。
「WeWork」の基本的な提供手法は、ビルオーナーからフロア単位でまるごと借りて、それを小分けにして貸し出します。
日本でオフィス・事務所を借りるとき
日本でごく普通に賃貸オフィスを借りる場合、たいていは1年を超える契約で、しかも敷金を家賃の1年分ぐらい積み立てることを要求されます。たとえば、家賃が月100万円だった場合、1千万円ぐらいのおカネをビルオーナーに手渡して寝かせることになります。このほかに改装費用や引越費用が発生します。
さらに、出るときにも費用がかかります。
「原状回復」といって元の状態に戻す工事費用や、残存期間と言われて家賃6か月分(!)を支払うこともごくごく普通に行われています。
よって、オフィス移転はかなりのリスク・出費が伴うわりに、会社が急発展するとすぐに人員がいっぱいになって足りなくなってしまうので、特に管理部門にとっては悩みの種であることも多いのです。
「WeWork」は月々契約ですぐ入れる・すぐ広げられる
これに対して、「wework」の契約は月単位です。
しかも、壁が移動させられるようになっており、借りる広さを柔軟に変更できる仕組みになっています。フロア単位でで借り受けているので、その内側では「WeWork」側がなんでもできるということです。
また、壁が基本的に透明になっていて、これも「WeWork」のオフィスの特徴です。
巨額の前払い+1年縛りが当たり前だった賃貸オフィスの業界に、月単位の契約を持ち込んだのですから、これは「サブスクリプション化」と表現してもよい革命だと考えています。
「サブスクリプション」とは、
電気代や水道代のような形で支払うサービス。
サービスの横展開
大きなフロアにたくさんの企業が集まっているとそこの別の付加価値を付けることができます。
どの企業でもだいたい同じように必要となるサービスがたくさんあります。たとえば、
- 受付
- 清掃
- 勤怠などの人事管理
- 福利厚生の手配
- パートナー探し
- 各種保険
- 内装変更
- などなど・・・
無料・有料組み合わせて、これらを提供すれば、入居企業も手間が省けて、「WeWork」側も売り上げが増える、Win-Winのビジネスが生まれます。
日本展開のときの報道では、共有スペースで生ビールが無料というサービスがやたらと強調されていましたが、ビジネスの本質はこのようなオプションサービスにあります。
日本での急速展開
ソフトバンク社の出資が入るなど一部で話題沸騰だったものの、日本でも都心ではシェアオフィスやコワーキングスペースなどが激増しており、「WeWork」のビジネスモデルをまるごとパクるようなサービスはほとんど話題になりませんでした。
そうこうしているうちに、「WeWork」が2018年2月に上陸しました。
むしろ驚いたのはそこからの急速な拠点展開です。六本木でのオープンから、1年ほどで全国14拠点開設しました。
ライバルとなるシェアオフィス他と比較すると、少し割高な価格設定ですが、どこの拠点も大人気ですぐに埋まってしまうようです。スタートアップやベンチャーではなく、大企業が一部の人員を入居させているケースがよく報道されています。
一般に、不動産領域はその地域独特の慣習や制約があり、アメリカをはじめとした海外企業が入りにくいと言われていますが、「WeWork」はその壁を軽々と越えて日本の参入してしまいました。
まとめ
「WeWork」がこれからどうなっていくのか、業界全体の変化を促すスイッチとなりえるのか、とても楽しみです。
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