技術・テクノロジーを核としたスタートアップ企業や創業チームが、プロダクト開発やサービス構築以外で、初期にやるべきこと、気をつけておくとよいことを3つ紹介します。
技術スタートアップが最初にプロダクトを世に出すときにやるべきこと
なんらかの技術を核としたスタートアップ企業、創業チームは、最小のプロダクト・核となる機能だけしかないサービスを初期に出すのが、昨今のセオリーです。リーン・スタートアップにおける「MVP(Minimal Viable Product)」を、なんらかの形でリリース・公開します。
そのときに、プロダクトそのものを開発したり、サービスを組み立てたりすることを、怠ったり忘れたりすることはありません。しかし、それ以外のことがおろそかになり、あるいは、配慮が届かなくなるのが普通です。
創業初期に、プロトタイプ、α版、テスト版などの位置づけでプロダクトをリリースするとき、サービスを公開するときに、事前にやっておくべきことをピックアップします。
1)「ホームページ」をつくる
当たり前すぎる話しから入りますが、「ホームページ」をつくります。Webサイトというよりは、本来の意味の「ホームページ」つまり、サービスにリンクしてもらう基点となるページを用意します。
ドメインを取る
独自ドメインを一つおさえましょう。国内では以下の2つがよく利用されていると思います。
GCP(Google Cloud Platform)を利用する場合は、「Google Domains」 も評判がよいのでオススメです。
独自ドメインが1個あれば、あとで変わったとしてもリダイレクトして飛ばすことができます。
見た目はできる限りひと手間・一発で済ませる
見た目のデザインやレイアウトは、できる限りひと手間で済ませます。プロトタイプ版リリースの段階で、ここに時間をかけることに意味はないからです。
オススメの方法を2つ紹介します。
WordPressのプラグイン一発
WordPressには、いかにもそれっぽいデザインをひと手間でつくるプラグインがたくさんあります。
たとえば、「Mesmerize」というWordPressテーマを利用すると、こんな感じのページが一発でできます。
これにお問い合わせフォームを加えておきましょう。いちばん有名なお問い合わせフォームは「Contact Form 7」です。これも本当にひと手間でお問い合わせフォームができてしまうので試してみてください。
STUDIOを利用する
本当に、2クリックでサイトができてしまう、超ステキなツール「STUDIO」を紹介します。
テンプレートを選んで、えいってやると、レスポンシブのかっこよいページができてしまいます。あとは、テキストや図を置き換えていくだけです。
初期は、画像・図版があまりないと思いますが、それっぽい写真が大量にあって選んで使えますのでお手軽です。
デメリットは、独自ドメインで利用する場合少し割高になることです。Publishプランで月額9ドルなので、レンタルサーバ+WordPressが月500円ぐらいだとすると2倍ぐらいの費用になります。しかし、手間を考えるとコスパは最高だと個人的には思っています。
ユーザーが戻ってくる仕組み・最新情報が受け取れる仕組みを、必ず置いておく
テキストや図版などのコンテンツを一通りいれて公開したら、ページを見た人が興味を持ってくれた時に戻ってこれる仕組みを用意します。
B向け・法人向けであれば、メールアドレスを登録するフォームを置くのが一般的です。見込み顧客リストを作るためにも、メールアドレスを集めておくことは必須でしょう。ページの一番下に一つ付けておけば事足ります。
C向けですと、メールアドレス登録よりは、SNSをフォローさせるのがよいかもしれません。相手の顔もある程度みることができますし、フォロワー数を増やしていくことはうれしいことでもあります。Twitter、Facebook、Instagramなど自分たちのプロダクト・サービスの特性によって、マッチするものを選びましょう。最初はどこか1つでよいと思います。
これを置いておくことで、ユーザー・見込み顧客に最新情報・更新情報をお届けする仕組みも同時につくることができます。
開発者ブログを書く
技術・テクノロジーを核として創業するスタートアップが、信頼を獲得する方法は意外とシンプルです。
それは「開発者ブログ」「テックブログ」を書くことです。
たいていの場合、ものすごくマニアックな、何か相当変わったことをやっているはずです。あるいは、一晩かかって解決したけど知っていればたいしたことのない難題を、何度も解決しているはずです。
それを、ごくごく部分的でよいので、そのままブログに書いていきます。
すべてを書いてしまうと、サービスをマネタイズするとき、つまり、おカネに変えるときに問題が起こることがあるので、部分的に小出しにしていくと、手間がかからず記事更新ができて効果的です。
開発者・プログラマからみるとかなりめんどくさい作業になるのですが、これをやることで信頼感とともに、SEO効果も見込むことができます。つまり、頻繁に更新されるWebサイトをGoogleは優遇するからです。
技術者自身が考えるほど、技術そのものを厳密に評価されることは実はあまりないので、「同じような開発をしている人たちにはたぶん役に立つだろう」というぐらいの軽い感じで始めてみてください。
2)合宿
すでにどこかのオフィスで毎日一緒に働いている場合でも、「合宿」と称してチーム全員が集まり、外部のアクセスをすべて止めて、集中して開発することは、いろいろな良い効果があります。
「合宿」だからといって、山奥や海辺の別荘に行く必要はありません。おカネがありあまっているなら別ですが、通常はオフィスの会議室を占領したり、オフィスがなければいつも集まっている場所やメンバーの部屋でもかまいません。
学生であれば、夏休みや冬休みの間で1週間あるいは2週間を、遊びに行くのを我慢してプロダクト開発にあててみてください。
まず、プロダクト開発が進みます。集中して行いますので当然です。特に、チームメンバーが顔をつきあわせて、他のコミュニケーションをシャットダウンすることに、おそろしいほどの効果が出るので、まだやったことがない方はぜひ試してみてください。
そして、チームの結束が強まります。要するに、仲良くなるわけです。「同じ釜の飯を食う」という言葉通りの効果があります。
また、この合宿方式を洗練させたようなノウハウとして「スプリント」という手法がありますので、目を通しておくとよいでしょう。
3)リーン・キャンバスを100本ノック
このブログでも度々取り上げている「起業の科学」の中で、田所雅之氏はこう語っています。
事業計画書の作成に2カ月を費やすぐらいなら、10分で書けるリーン・キャンバスを何百回も書き込むほうがはるかに効果的です。
「入門 起業の科学」より引用
ざっくりでもかまわないので、リーン・キャンバスを何度も書くことで、次のような効果が見込めます。
効果1)お客様・ユーザーの立場で考えてしまう
プロダクト、特に技術面で強みを持っているチームは、作り手側の立場に偏ってしまいがちです。つまり、顧客目線、ユーザー目線をすぐに忘れてしまいます。ものづくりに集中しているとしかたがないところがあります。
しかし、昨今のトレンドでは、ユーザー、ターゲットを絞り込んでそのお客様のためだけにプロダクト・サービスを組み立てるのがセオリーです。
よって、ユーザー目線をときどき思い出して、プロダクト開発に集中している状態から少し正気に戻る作業を、意図的に入れることが大事です。
このユーザー目線を考えるのに、「リーン・キャンバス」は最適なツールです。まず最初に、ユーザーのことを書かなければならず、なぜ喜ぶのか徹底的に考えさせられるフォーマットとなっているからです。
効果2)お金儲けをどうするか考えてしまう
「リーン・キャンバス」では、一番下の部分が「コスト構造」と「収益の流れ」、つまり、ビジネスモデル・儲けの構造を考えざるをえないフォーマットになっています。
特に、技術から出発するスタートアップでは、お客様にどんな形でどのように届けるかを手探りすることが多く、つまり、何がウケるか、何が求められるかを絞り込んでいかなければなりません。このとき、「どうやって稼ぐのか」が後回しになります。
後回しにすること自体は間違っていません。まずは「PMF(Product Market Fit)」を探して組み立てるのが優先事項です。しかし、考えることは常にサボってはいけません。
「リーン・キャンバス」を何度も書くことで、ビジネスモデル構築を忘れないようにする効果があります。
まとめ
最初期のスタートアップが、プロダクト開発そのものやサービス構築以外の部分で、やっておくべきこと、気をつけておくとよいことを3つに絞り込んで紹介しました。
お役に立てば幸いです。
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