「プロマネ」あるいは「PM」と言われたときに、それを言った人やその人がいる現場によって意味が違うことがあります。他にも似たような仕事として「Webディレクター」「プランナー」という言葉もあります。これらがどんな関係になっているのか、どんなトレンドが関係しているのかをコメントします。
人や現場によって異なる「PM」「プロマネ」の意味
- プロジェクト・マネージャー
- プロダクト・マネージャー
たった1文字の違いですが、どちらも「PM」あるいは「プロマネ」という略称で呼ばれます。いままでの観察結果から、その人が属する現場、あるいは、仕事の性質によって、どちらを意味するのかが異なっていました。
今回は、主に職種・キャリアの面から、この違いを明らかにしていきます。
以前は違う名前で呼ばれていた?「プロジェクト・マネージャー」
私自身は、20年のキャリアの大半を「Webディレクタ」あるいは「プランナー」「企画担当者」だと思って過ごしました。
つまり、デザイナー、コーダー、プログラマーなど職種や専門の異なるメンバーとチームを組んで、ホームページやアプリを作る仕事です。全体をリードしつつも、デザインとプログラム以外全部やる、というスタンスで球拾い的な仕事もします。
お客様の課題解決をするときに、ホームページを作っているだけではやり切れず、イベントをやったりパンフレットをつくったりもしていたので、そういうときには「プランナー」と言ってかっこつけたりしていました。
この「チームを組む」ことを「プロジェクト」と呼び、その成果を出すまでやりきることを「マネジメント」と言い換えると「プロジェクト・マネージャー」という職種が成立します。
「ああなるほど、いまはこの仕事を「プロジェクト・マネージャー」と呼ぶらしい。」と気がついたのはここ数年です。つまり、「Webディレクター」「プランナー」「企画担当」などの仕事が含まれた言葉です。
「IT」という言葉ができた頃、自分が「IT技術者」だとは知りませんでしたし、この程度の言葉の変化は、ネットの世界では日常的です。
急増しているPM「プロ〇クト・マネージャー」
ところが、最近、同じように「PM」「プロマネ」と省略されて混乱する職種が急増しています。
それが「プロダクト・マネージャー」です。
この「プロダクト・マネージャー」の急増には背景があります。
背景1)「プロダクト」「サービス」の急増
ここでいう「プロダクト」は、ネット上のサービス、つまり、Webサイトやスマホアプリのことを言っています。(※このブログのメインテーマがネットでの起業ですので、言葉の意味を狭くすることをお許しください。)
以前は、「1つの会社に1つのサービス」が当たり前でした。
たとえば、「Google=検索」「Amazon=ネットで本を買う」「Facebook=SNS」という感じです。死語になりつつある「ドットコム企業」という言葉もよくよく考えると「1つの会社に1つのサービス」が前提になっています。
しかし、最近の流れでは、多種類のサービスを展開するのが大きなトレンドです。
たとえば、Google社が豊富な資金と開発パワーで、ありとあらゆるサービスを作っては失敗して捨てていることは有名です。Google社が廃止したサービスやアプリを記録しているサイトまでできています。
この流れが国内の中小企業にまで下りてきており、新サービスをどんどん出したり、他社サービスをM&Aで買収したり、個人がつくったサービスを事業譲渡の形で買ったりすることが普通に行われるようになりました。
サービスの運営には担当者、あるいは、運営の責任者がそれぞれに必要です。それを「プロダクト・マネージャー」「PM」と呼べば、サービスの数だけ「プロダクト・マネージャー」が増えていくことになります。
背景2)権限委譲と小さなチームのトレンド
もう一つの側面として、会社の内部組織のつくりかた、マネジメントのトレンドが影響しています。
10年ほど前にプロダクト・サービスの内部でWebディレクタを担当したとき、組織が巨大であったことも影響して、分業がかなり進んでいました。
- 企画:企画担当
- 制作開発の進行:ディレクタ
- 運営(サポートや数字管理):ディレクタ
- マネタイズ最適化:広告担当
- 社内外の協業:ビジネス担当
この他に、実際に作る職人(デザイナー、コーダー、プログラマー、データ作成担当など)がいたわけですから、かなりの大人数でした。これは担当を分けて分解したそれぞれの仕事の質を上げるにはとてもよいのですが、外部環境、つまり、ライバルやユーザーが大きく動いたときには負けてしまいます。大人数の組織は変化に適応するのが遅くなるからです。
そこで、小さな組織、少人数のチームにして、変化する速度を上げようというトレンドができてきました。
また、大人数の組織で統制をとるためには、責任者を置いてその承認がなければ仕事が進まない、という形になるのが普通です。この「承認する権限」を小さなチームに下ろしていく流れが加速します(権限移譲)。現場で判断して即行動すると、変化する外部環境についていける組織になる、というわけです。
小さなチームにして権限移譲することで、「アジャイル」という開発手法を取り入れやすくなります。つまり、サービスの修正や機能追加を高速で行えるようになります。私が実際に経験した現場の事例では、3カ月から半年程度かかっていた機能追加を、2週間から1か月ぐらいで小分けに出していってその都度市場・ユーザーの反応を見る、というやり方に変わっていきました。
そのかわり、前述の企画、ディレクション、プロジェクトマネジメント、マネタイズ、経営数字の管理、分析などをぜんぶ一人でこなす人が出現し始めます。これが現在もっとも多い、典型的な「プロダクト・マネージャー」の姿でしょう。
共通していること:フラットな組織
「プロジェクト・マネージャー」と「プロダクト・マネージャー」に共通しているのが、フラットな横のつながりが前提である、ということです。
伝統的な「マネージャー」は、人事の権限を持ちます。つまり、指揮命令する権限、人事評価をする権限を持っていて、その指示には強制力がある程度働きます。
「プロジェクト・マネージャー」や「プロダクト・マネージャー」という場合、人事の権限を持つことはほとんどありません。つまり、プロジェクトやプロダクト、サービスの担当する組織では、横並び、フラットな組織で、上意下達で命令することはできません。
権限移譲されているのでその分責任を問われる立場にありつつも、決して偉い人なわけではない、微妙な立ち回りを求められます。
まとめ
略すと「プロマネ」「PM」となる「プロジェクト・マネージャー」と「プロダクト・マネージャー」の違いや共通点を、キャリアの側面からまとめました。
お役に立てば幸いです。
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