「プロダクトマネージャー」と「プロジェクトマネージャー」、たった1文字しか違いがありませんが、ネットの起業を考えるうえでそこには深い深い溝がありました。今回は、お客様やユーザーの観点で、この2つの「プロマネ」の違いを明らかにします。
お客様やユーザーの立場から、「プロマネ」の違いを見つめる
「プロダクト・マネージャー」と「プロジェクト・マネージャー」の違いについて、前回はキャリア面、つまり、マネージャー自身の視点からその仕事を分析しました。
今回は、お客様やユーザーの立場から、その仕事の見え方を考えます。
つまり、チームやそれを率いるマネージャーが、どうやってお客様やユーザーとコミュニケーションするか、という観点です。このブログのメインテーマである「ネットでの起業」を考える上での、重要なポイントがここにはあります。
コミュニケーションの主体は?
そこで、「プロダクト・マネージャー」と「プロジェクト・マネージャー」とで、お客様やユーザーとのコミュニケーションがどういう形になるのかを考えます。
「プロダクトマネージャー」のコミュニケーションの主体は、プロダクトやサービス
「プロダクト・マネージャー」と言った場合、その名前通り「プロダクト、製品、サービス」がマネジメントの主たる対象です。ということは、お客様やユーザーとのコミュニケーションは、プロダクトを介して行う、あるいは、サービスを通じて行うことが前提です。
そして、こちら側、内側のチームメンバーは、同列に並んでプロダクトに向かい、その向こう側にいるユーザーの幸せや自己実現を考える仲間です。
- チーム・プロマネ → プロダクトやサービス → お客様・ユーザー
よって、「プロジェクト・マネージャー」は、お客様やユーザーと直接コミュニケーションをとることがほとんどありません。
これは、ユーザーの立場で考えればすぐわかります。
たとえば、Gmailを使う人が、Googleの中のGmailを作っている人たちと会うことはほぼありません。FacebookだってTwitterだって同じです。会えません。リサーチ・インタビューやイベントなど特殊な場で、一部の人が会えるのみで、マネージャーであっても大半は会う機会がありません。
「プロジェクト・マネージャー」のコミュニケーションの主体は、「ヒト」
これに対して、「プロジェクト・マネージャー」と言った場合、「プロジェクト」というのは(ネットの仕事においては)人の集まりですから、マネジメントする対象、コミュニケーションする主体は「ヒト」ということです。そして、「プロジェクト」の成果物は、プロダクトやサービス、あるいは、そのアップデート・リニューアルですが、それをしてほしい、それを依頼するヒトが、チームメンバーとは別に存在することが連想される言葉です。
- チーム・プロマネ → ヒト(お客様) → プロダクトやサービス(成果物) → ユーザー
「プロダクト」をマネジメントする場合、ユーザーに向かってチームメンバーを横並びにする考え方になりやすいですが、「プロジェクト」をマネジメントする場合、依頼者との間に「プロジェクト・マネージャー」が窓口として入る形になり、ピラミッド的な組織が出来上がりやすくなります。つまり、「プロジェクト」のお客様やユーザーとのコミュニケーションの度合いが、チームメンバーの職種によって差が大きくなる傾向があります。
これは一概に悪いことではなく、ユーザー理解と作ることを分業すれば生産性が上がることはよくあります。まったく違った能力を求められるので、一人で両方をやり切れる人はそれほど多くないからです。
「プロマネの違い 」から見える業態の違い
次に、「プロマネ」の違いを業態から考えます。
「プロダクト・マネージャー」と呼びたくなる業態は、典型的なスタートアップ
製品をつくって販売する、あるいは、サービスをつくって月々の課金をするという業態の場合、製品やサービスが売れない、広がらない、というリスクがあります。ユーザーは1000万人に広がっていくかもしれないし、0人で終わるかもしれないのです。
この場合、その製品をつくるチームをマネジメントする人を「プロダクト・マネージャー」と呼びたくなります。コミュニケーションの主体がプロダクトやサービスとなるからです。
「スタートアップ」と呼ぶ場合、この業態をとっていることがほとんどです。まったくの失敗に終わる確率が高いものの、大当たり・大儲け・大成功する可能性があります。製品やサービスはヒトを増やすよりも速く広げられるからです。
HBSの「Product Management」コースが示すもの
これには裏付けがあります。
かの有名なハーバードビジネススクール(HBS)には「Product Management」というコースがあります。 つまり「プロダクト・マネージャー」が行う仕事を学ぶコースのはずです。
このサイトの「カリキュラム」を記述したページの最後に、次のような記述があります。
Many projects incubated in this course go on to raise outside funding and/or are accepted into Accelerator programs (YC, TechStars).
「Product Management, An Experiential Learning Course at HBS, Curriculum 」より引用
超訳すると、このプロダクトマネジメントコースを学んで卒業したチームは、かの有名なYコンビネーターやTechStarsから投資を受けて起業するよ、と言っているわけです。YCやTechStarsは、シード期・最初期の企業に投資をしてチームを育てるアクセラレータ―ですから、「Product Management」と「スタートアップの起業」はイコールで結ばれているわけです。
「プロジェクト・マネージャー」と呼びたくなる業態は、業務受託や請負
これに対して、そのプロダクトやサービスの制作や開発を依頼される業態があります。
たとえば、ホームページをつくってほしい、と思った場合、作ってくれる人を探して依頼します。いわゆる「制作会社」に依頼すると、ヒアリングをして企画書を作り、費用を見積もりして合意できれば、制作開発して納品します。
この仕事の流れは、このブログでも以下のような記事がいくつかあり詳しく解説しています。
このとき「プロジェクト・マネージャー」は、依頼者と話しをします。製品やサービスとしてのホームページをつくりますが、OKするのは依頼者であり、おカネを払ってくれるのも依頼者です。
そのホームページを使うユーザーやお客様がいるはずですが、そのユーザーのことを考えなければ企画や制作ができないのは事実であるものの、実際には依頼者の希望や意図で行動します。
そして、もらえるお金は「作った分だけ」「ヒトが動いた分だけ」ということになります。成果物を出した後に、10倍100倍になることはありえません。
この業態のメリットは、リスクが小さいことです。依頼者との人間関係が崩れなければ、結果がゼロ円ということはなくおカネを払ってもらえます。
しかし、その成果物が100倍1000倍になることはありえないので、「スタートアップ」とは呼ばれません。その組織が小さければ「スモールビジネス」「SMB」と呼ばれます。もちろん、この業態で大企業になっている会社はたくさんあります。
まとめ
「プロダクト・マネージャー」と「プロジェクト・マネージャー」の違いについて、そのコミュニケーションの主体を考えて、そこから連想される業態を分析しました。
起業を考えるときに、この違いはものすごく大きいです。ビジネスの仕組み、ビジネスモデル、おカネのもらい方を考えるときに、そのベースとして知っておいたほうが有利です。
お役に立てば幸いです。
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