裏側をみると本質がみえる、などとよく言われます。
たとえば、新聞やテレビの報道に流れないところに本質があるのだ、と言われたりすると、表側なのか裏側なのかわからなくなって混乱します。
しかし、いわゆるダークサイド、負の面に注目することで、その本質がみえるときがあります。
この記事では、仮想通貨やブロックチェーンで起きた事件から厳選して3つを振り返ることで、ダークサイドからその本質を照らし出します。
仮想通貨の流出、盗難
仮想通貨の流出や盗難事件は、コインチェック社の事件が記憶に新しいところですが、大きく報道されたものだけでも何件か起きています。
むしろ、大きな金額以外は報道されない状況だと言われています。(細かい盗難は誰にもわからないかもしれないのです。このあたりからも仮想通貨の本質にせまれそうです。)
「マウントゴックス社」のビットコイン流出事件 (2014年)
一番古いものは、2014年に起きた「マウントゴックス社」の事件でしょう。
2010年からビットコインの交換事業を始めた国内最古参です。逮捕者が出てからビットコインの価値が大幅にあがっているのでその金額規模がよくわからなくなっていますが、一説には500億円規模の流出だと言われています。
なぜ仮想通貨の流出、盗難が止まらないのか
では、なぜ仮想通貨の流出、盗難が止まらないのでしょうか。
仮想通貨取引所は、その仕組み上、顧客から「秘密鍵」を預かります。別途解説したとおり、「秘密鍵」が手に入ればその口座(ペアとなる公開鍵)のおカネは自由に引き出しできます。
顧客が実際におカネを引き出す(送金する)ときには同じ「秘密鍵」が必要になりますから、仮想通貨取引所はサーバ上(ネット上)に「秘密鍵」を保管せざるをえません。ネット上に置いておくなら、ネット経由で盗まれる可能性をゼロにはできないこととなります。
「Bitfinex」社の仮想通貨流出事件(2016年)
また、ブロックチェーン関連の書籍によく取り上げられている事件として、2016年に起こった「Bitfinex」社の仮想通貨流出事件があります。当時の価値の日本円換算で65億円の流出が起こりました。
その流出経緯は、コインチェック社やマウントゴックス社となんら変わりないのですが、その後の対応方法がちょっと変わっていたというか、賢かったのです。
たとえば、コインチェック社は、盗まれた当時の日本円換算で現金を返金しています。これがおそらく一番よくある対応手法でしょう。
一方、Bitfinex社は、盗まれた全額をユーザー負担の扱いとしつつも、自社の仮想通貨(BFXトークン)を発行して被害にあったユーザに割り当て、配布しました。
つまり、いわゆる社債を発行して被害額を補填するような形にしたのです。
そして、このBFXトークンを順次買い戻してユーザーにお返ししました。こうすることで、65億円分を一挙に支払う必要がなくなり、会社として無理のない範囲で被害額の負担、補填をすることができます。
自社の技術をつかってトークンを発行する、という手法で、銀行や証券会社を介することなく自社のコントロール配下ですべて行えたのは、クレバーだなぁと感じます。
DAO事件(2016年)
ブロックチェーン技術の代表格「スマートコントラクト」の運用のスキを狙う事件が起きました。
「イーサリアム」という仮想通貨やスマートコントラクトを提供する基盤(プラットフォーム)上で、「Slock it」社が投資ファンドをつくりました。スマートコントラクトという一種のプログラムを書いて、そのプログラムにそって自動的(自律的)に投資ファンドの運用が行われる仕組みを作りました。
ところが、そのプログラム(スマートコントラクト)に不具合(バグ)が見つかりました。ある人が、そのファンドから自由におカネを引き出す方法を発見してしまったのです。
ブロックチェーン技術のメリットであり、デメリットでもあるかもしれないのが、あとから修正や削除ができません。よってこのスマートコントラクトも、自由におカネを引き出せることがわかってしまったとしても、あとから書き直すことができません。さぁこまった、となったのです。
このプログラムでは、実際におカネを引き出せるのは27日後になっていました。その間に対策をうたない限り、おカネを(不正に?)引き出されてしまいます。
「DAO事件」の解決策
この対処法が、ブロックチェーン技術の本質を示しているようで、なんともいえない感じが残ります。
どうしたかというと・・・
なんと、時間を巻き戻してしまったのです。
該当の取引が行われる前まで、ブロックチェーンを戻して、そこから新たにスタートさせたのです。これに使われた手法を「ハードフォーク」と呼びます。
つまり、該当の取引を「なかったことに」してしまったのです。
「ハードフォーク」は、そのブロックチェーンに参加する人々の合意を得れば可能となります。あとから修正や書換のできない仕組みではありますが、コミュニティに参加する人たちが合意すれば、なかったことにできるのです。
まとめ
「ブロックチェーン」あるいは「仮想通貨」を中心にして起こった代表的な事件を紹介しました。
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