今回は「D2C」についてコメントします。数回にわたって取り上げる予定ですが、この記事はその第1回目です。
「D2C」とは
「D2C」とは、「Direct To Consumer」の略称です。
「2」は「to」
「to」は、「2」と置き換えられることが多いです。もともとの由来は、UNIXのコマンドから来ていると思います。たとえば、AをBに変換するときに、そのソフトウェアに対して「A2B」とネーミングしていた習慣がありました。「D2C」の他にも、
- B2B : Business to Business
- B2C : Business to Customer
という用語も一般的になったので、UNIXコマンドというマニアックな世界だけでなく、比較的ポピュラーな言葉になりました。
「単品・少品種のメーカーが直販するケース」を指すことが多い
「Direct To Consumer」を直訳すると「消費者に直接販売する仕組み」という感じです。
ただ、実際に「D2C」と呼ばれる事例を眺めていると、「単品・少品種のメーカーが直販するケース」を指すことが多いです。
たとえば、小売店・お店が自ら商品を製造販売することがよくありますが、これは「D2C」とは呼ばれません。
その代表事例は「ユニクロ(UNIQLO)」です。もともとはいろいろなメーカーの商品を売っている服屋さん(死語?)でしたが、現在は、自社で企画設計をして自社工場で製造した商品を売っています。
この他、関東には店舗がありませんが、関西では有名な「ラ・ムー(LAMU)」というディスカウント・ストアは、自社の食品工場や養殖場、畑などを次々と作って一次産業を取り込み、直接小売店に持ち込んで売ることで、激安価格を実現しています。
このような業態は、「D2C」とは呼ばれず「SPA」と呼ばれます。
「SPA」は「Speciality store retailer of Private label Apparel」の略で、日本語では一般に「製造小売業」と訳されます。
また、ネット上のサービスで、モノを伴わない、実物をやり取りしないビジネスも「D2C」とは呼ばれません。これは一般に「SaaS」(Software as a Service の略)と呼ばれます。
企画・製造から直接消費者に届くインパクト
商品がどのようなルートをたどって消費者のもとに届くのかは、小学校や中学校の社会科の授業でたいてい出てきます。「流通」などのキーワードで画像検索してみましょう。
たとえば、野菜の一般的なルートは:
生産者(畑) → 農協やバイヤー → 市場 → スーパー・小売店 → 消費者
というイメージです。
これが「直接消費者に届く」ということは:
生産者(畑) → → → → 消費者
これがどういうインパクトを与えることになるかを想像すると:
- 間に入っていた物流ビジネスは消滅(中抜き)、
- 消滅した分だけ、消費者に届く価格は安くなる
わかりやすいので一次産業の「野菜」を見てみましたが、工業製品など、そのほかの業種業態でも、似たような状況です。
生産者・製造者が直接消費者とつながる方法【ストーリーを売る】
このように「中抜き」をするビジネスが、新しいがために賞賛される傾向がありますが、抜かれてしまう中間の物流ビジネスが何もしていないかというと、そういうわけではありません。
たとえば、お店に並ばなければ、その商品が存在するかどうかさえ、消費者にはわかりませんから、買うことができません。
よって、消費者・顧客と直接つながる手段・手法が必要です。
つまり、ネットでつながってしまえばいい、ということです。
具体的には、「SNS」がフル活用されます。「SNS」はそもそも「だれかとつながるため」につくられたシステムですから、相性はピッタリです。
SNSでつながって、伝えるのは「ビジョン、思想、ストーリー」
しかし、主たる手段「SNS」を通じて伝えるのは、商品情報ではありません。商品情報は、そうでなくてもネット上にあふれかえっており、消費者はそれほどみたくないのです。
伝えるのは、ビジョンや思想、ストーリーです。あるいは、それに裏付けられた生活スタイルや行動パターンです。
そのライフスタイルを実現する手段として、商品が提供されます。
また、消費者は、そのストーリーに心を動かされ、その生活スタイルを実現せんがために、その商品を熱烈に買い求めます。
わかりやすい事例は、スーツケースで大ブレイクした「Away」です。「Away」の「SNS」であるInstagramアカウントをみてみましょう:
当初に比べて商品の写真が増えましたが、それでもざっとみて半分以上の写真に商品が含まれていません。たとえ映っていても、商品がメインになっている画像は少なく、「Away」のスーツケースやかばんとともにあるライフスタイルを表現することを強く押し出しています。
こういう生活してみたいよね? → だったら「Away」を買うべきです、
という構造です。
アパレルやコスメから、全業種へ広がり
アパレル、ファッション系やコスメ、美容系の商品からブレイクして、日用品などすべてのカテゴリーの商品へ、広がっています。
また、ネット上のビジネスであるため、「サブスク(サブスクリプション)」というビジネスモデルと組み合わせて展開するケースが増えています。
まとめ
「D2C」とは何か、その概要と戦略をお伝えしました。
次回から、事例をもとに、さらに詳しく解説していきます。
お役に立てば幸いです。
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