スマホが飽和したからネットビジネス終了!? スマホ・オワコン説を検証する

マーケティング

スマホ市場の伸びがゼロになったから、ネットのサービスをいまから起業しても無理ゲーでオワコンだ、という主張をときどき見かけるようになりました。このブログでオススメしているネットでの起業を否定されてはスルーできないので、「本当に終わりなのか」を分析します。

スマホ市場は・・・確かに成長ゼロ

スマホ市場は、確かにゼロ成長です。たとえば、統計情報でよく出てくる「IDC」という企業の調査データが 「statista」というサイトにまとめられていました。

https://www.statista.com/chart/12798/global-smartphone-shipments/ より引用

緑の棒グラフが全世界のスマホの出荷台数、赤い線がその成長率です。
2017年に完全に横ばい・ゼロ成長になり、2018年から下がり始めました。

このグラフを眺めると、確かにオワコン説、つまり、スマホはもう増えないんだから「スマホが増えるとユーザーが増えて儲かる」みたいなビジネスはダメになっていくように見えます。

「テクノロジー思考」で切り出されている論点

最近チェックしたテキストで、このことを一番鋭く分析していたのがこの「テクノロジー思考」という本でした。

著者がスタートアップ投資を長年手掛けていて、シンガポールを拠点としたVC(ベンチャー・キャピタル)を運営しています。この観点から、ネットを中心としたビジネスの動向や資金の動きを、漏らさずMECE的に分析してバサバサと切っていきます。超高性能AIといった感じで、目に見えるものを唯物的に冷徹に仕分けています。

この本の冒頭で、スマホは飽和し、ピュアインターネット企業(=インターネットで完結するサービス)は先頭集団から離れて、広告産業とその撒き餌(まきえ)であるコンテンツビジネスは成熟した、と語られています。

反論を許さない説得力があります。

「飽和=オワコン」なのか

飽和、つまり、ゼロ成長になることは、すなわちビジネスの衰退を意味するのでしょうか。
そこで、もう少し身近な例として、テレビの出荷台数を見てみましょう。

電子情報技術産業協会電子統計委員会「2019年 民生用電子機器国内出荷実績(金額)」より引用

テレビの出荷台数は、世界規模で見ても10年ほど前からゼロ成長です。このグラフは、国内の最近2年の傾向を表していますが、これも完全に横ばい、ゼロ成長、飽和状態であることが見てすぐにわかります。

しかし、だから終わっているかというと、そうでもありません。

スマホと同じように、テレビの製造だけでなく、その上で展開される番組などのコンテンツを制作する会社、配信を行うテレビ局などいろいろな業種・業態のビジネスが関係しています。それらを合わせると、いまでも影響力の非常に大きい巨大なマーケットです。

しかし、テレビは業界の歴史が長く、既得権益はそれに比例するようにカタいため、新規参入がどんどん増えるような活況ではありません。いまでも新規参入がどんどん増えるスマホ・ネットサービスの領域は、テレビに比較すると既得権益が柔らかいと言えます。

「出荷台数」はそもそも増える数なので、市場の大きさが減っているわけではない

しかも、いままで見てきた数字は「出荷台数」です。

最初にあげたスマホのグラフでは、1年に1,404m、つまり、年間14億台のスマホが出荷されています。つまり、去年スマホが14億台販売されて、新規に買われたり買い替えられたり一部は売れ残ったりした、ということを意味しています。

よって、テレビの出荷台数が飽和したからテレビ業界が衰退した、ということではないのと同じように、スマホの出荷台数が減ったからスマホ・ユーザーが減ったことを意味しないわけです。

いままでのような市場全体の成長、スマホで言えば、スティーブ・ジョブズが「iPhone」を世に出してから10年間の、爆発的成長はしなくなりましたよ、ということを意味しています。

「X-tech(クロステック)」のトレンド

「テクノロジー思考」では、「ピュア・インターネット」が終わっていくがいま来ているビジネス・次に来るネットサービスは、リアルとネットの両方を使うサービスだと結論付けています。

つまり、このブログでも繰り返し取り上げている「X-tech(クロステック)」です。

「X-tech(クロステック)」は、保守的で安定・停滞していた業界にネット・テクノロジーを持ち込んで、極端な価格の安さや劇的な効率アップを実現してしまいます。既存の業態を破壊するイノベーションを起こしています。ホテル旅館に対する「Airbnb」、タクシーに対する「Uber」、オフィスビルに対する「WeWork」など、アメリカ国内だけでなく世界展開するサービスが続々生まれました。

「テクノロジー思考」では、もはや定常状態といえるほど世界的に余っているおカネが、田舎の社会問題解決にどんどん投入され、田舎でも都市的生活ができるようになる「アーバナイゼーション」が進むと予測しています。

まとめ

「テクノロジー思考」をきっかけに、スマホの出荷台数が飽和したからと言ってネット・サービスはオワコンではない、ということを論じました。

「テクノロジー思考」に表されている注目論点として、「GAFAやMicrosoftに代表されるようなプラットフォーマーが市場を独占・寡占していて入り込む余地がほぼない」という前提・分析がありますが、これは別の記事で取り上げます。

お役に立てば幸いです。

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