まだまだ生き残る? 「IoT(Internet of Things)」
IT、ネットの世界は変化が早く、流行した言葉が消え去るのもすごく早いです。特にIPOなどで株価が大きく動く言葉は、もはや1~2年ですたれていく感じがします。この記事でとりあげる「IoT(Internet of Things)」という言葉も、最近あまり取り上げられなくなってきました。
しかし、この「IoT(Internet of Things)」というコンセプト自体は社会に浸透しつつあって、まだまだこれからビジネスを生み、付加価値を生んでいくようにみえます。
今回は、同じような感じで「すたれた感」が出てきた言葉として「ビッグデータ」、浸透しつつもそれだけでは騒がれない感じがある「クラウド」とともに、そのコンセプトをあらためて見直します。
「IoT(Internet of Things)」とは
「IoT(Internet of Things)」とは、
モノがインターネットを介して通信する技術の総称。
わかりやすい事例は、家電でしょう。
冷蔵庫や電子レンジがネットにつながってレシピなど教えてくれたり、しゃべって会話したりする家電製品は、電気屋さんでも普通にみるようになりました。
この他にも、クルマ、家(スマートホームと呼ばれます)、ドローン(プロペラがいっぱいついていて飛ぶアレ)、ドアの鍵など、「IoT」の事例はどんどん増えています。
人命に関わることでよりシビアな医療機器や、いままでテクノロジーとあまり結び付けられなかった農業への応用事例も増えています。
「IoT」の草分け的事例 : 「Nest」
しかし、「IoT」の草分け的事例は、なんといっても「Nest」でしょう。日本ではなじみが薄いかもしれません。
アメリカのビルやホテル、家などで、手のひらサイズのプラスチックの箱が壁についているのを見たことがあるかたは多いと思います。たいていは数字がきざんであって、回せるようになっています。
日本ではほとんどみないので、私は最初、何の機械なのかわからかなったのですが、これはサーモスタットという温度調節機です。
これは、ビルでは普通に使われる「セントラルシステム」と呼ばれる冷暖房システムの、各部屋につけられる温度調整スイッチです。
日本では、普通の家やマンションにセントラルシステムの冷暖房がついていることはほとんどありませんが、アメリカでは大きなビルもごく普通の家もセントラルシステムになっています。
ちなみに、アメリカにはすでに2500万個のサーモスタットがあって、1年に1000万個が住宅用に売れているそうです。(ダイヤモンド・オンラインの記事より )
これを、「IoT」コンセプトで置き換えたのが「Nest」です。
サーモスタットですから、温度の設定ができます。
何度か温度の設定を変えると、その生活パターンを覚えてある程度自動的に温度調整をしてくれるようになります。
部屋にだれもいないと温度を調整して節電してくれます。
スマートでかっこいい見た目・デザインに加えて、サーモスタットの機能として気の利いた感じがするところが、成功の要素として大事です。
「Nest」のキモ:インターネットにつながっている
さらに、この機械自体がインターネットにつながって、自分のスマホから部屋のサーモスタットの温度設定を変えられます。このとき実際の通信は次の形で行われていると推測されます。
サーモスタット
↓ ↓
Nest社のサーバー・データベース
↓ ↓
顧客のスマホアプリ
純粋に技術的にもこうしたほうが、できることが増えて保守にも有利なのですが、あいだにNest社のデータベースが入っているところが、キモです。つまり、各家庭につけてあるサーモスタットが、その情報をNest社のデータベースに、24時間自動的にアップロードするわけです。
それは、いつ、どこで、誰の家で、どの部屋で、温度、設定温度、ヒトがいるかどうか、など、ユーザーに「賢いサーモスタットサービス」をするために必要なデータを集めているだけなのですが、これがたくさんたまっていくと、いろいろなことがわかってしまいそうです。
「Nest」のキモ:「ビッグデータ」利用
たとえば、電力需要の予測に使えそうです。
あるエリアに一定以上の密度でこのサーモスタットがつけられていれば、そのエリアの天気や統計データと組み合わせれば、天気予報と照らし合わせるとかなり正確な予測ができそうです。
これは、実際にNest社が電力会社にデータを販売しています。
「ビッグデータ」
このように、たくさんのデータを集めて使える形に加工することで付加価値を出すコンセプトを「ビッグデータ」と呼びます。
「ビッグデータ」とは、
めちゃめちゃたくさんのデータを集めて計算する技術の総称。
「IoT」は「モノ」がインターネットを介してデータをアップロードしてきます。
モノはたくさんあります。
総務省平成28年度版情報白書によれば、2015年時点で154億個のモノが存在すると言われています。これらの「モノ」にはセンサーが複数ついています。そのセンサーが、毎時毎分毎秒、測定データをアップロードしてくるわけです。
よって、「IoT」と「ビッグデータ」は相性が非常によいことになります。
「クラウド」:「ビッグデータ」を、安くカンタンに扱うために
「ビッグデータ」を扱うには、それをためておいたり計算したりする機械、サービスが必要です。これを「クラウド」で実現します。
「クラウド」とは、
コンピューターやソフトを、すぐに使えるようにするサービス。
パソコンを使いたいと思ったら、普通は電気屋さんで買ってきて初期設定をして・・・と手間と時間がかかりますが、「クラウド」はハードウェアやソフトウェアをネット上でクリックひとつですぐ買えてすぐ使えることを実現します。
すぐ買えることに加えて、「クラウド」のもう一つのメリットが「スケール」です。
つまり、たとえば、データが多すぎて入り切らなくなったら、カンタンに容量・箱の大きさを増やせる、ということです。データが多すぎて統計の計算が進まなければ、計算する性能をあとから追加してさらにたくさん計算させることもできます。
よって、「IoT」+「ビッグデータ」+「クラウド」というコンセプトの組み合わせは、相性がとてもよく、サーモスタットで終わらずに、これからもまだまだ付加価値を生んでいくと考えられます。
データがたくさん集まることは、人工知能・AI・ディープラーニングとの相性も非常によいのですが、これは別記事で解説します。
まとめ
「Nest」の事例を中心に、 「IoT」+「ビッグデータ」+「クラウド」 という考え方・コンセプトを紹介しました。
お役に立てば幸いです。
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