起業、いわゆるスタートアップを立ち上げるにあたり、一般的には大事だとされていることのなかには、ヒトもモノもカネもない事業の最初の段階では必要ないことが、たくさんあります。
今回は、その中から、誤解の多いことを3つに絞り込んで取り上げます。
前提)事業の成長に応じて、段階に分ける
事業の成長度合いで、名前を付けます。ここではシンプルに次の2つに分けることにします。
- シード期:
- ビジネスの形がはっきりせず試行錯誤している段階
- グロース期:
- おカネが回り始めて以降、拡大していく段階
スタートアップの本によく出てくる成長曲線で表すとこんな感じです。
ビジネス・事業をやっていくにあたり、常識的にとても大事とされているが、「シード期」には必要ないもの、つまり、グロース期には必要になるが「シード期にはいらないもの」を取り上げます。
いらないもの1)経営
事業をやるのに「経営」が必要ないってどういうこと?
と思うかもしれませんが、「シード期」には必要ありません。
シード期に必要なのは「商売」であって「経営」ではありません。
「商売」をあえてヒトコトで言うなら:
「どうやっておカネをもらうか(お客様に喜んでもらいつつ)」
です。
おカネ・キャッシュが少しでも回転する状態を作らない限り、その後の拡大・発展はありません。
シード期の段階でいくらマネジメントをしようと思っても、「商売」がなければ意味がありません。
1人で創業しないスタートアップ
昨今常識になりつつある知識として、「創業者が1人だったら投資するな」というセオリーがあります。
ネット系のスタートアップであれば、おそらく創業者が2~3人であることが多いでしょう。「シード期」には創業者たちが走り回って「商売」を確立することが一番の優先事項で、志をともにする創業者チームに「経営」や「マネジメント」は必要ないのです。
いらないもの2)大半のマーケティング技術・宣伝手法・プロモーション手法
大半のマーケティング技術・宣伝手法・プロモーション手法は、「シード期」には必要ありません。
これはビジネスを勉強していればいるほど、気になります。振り回されそうになるでしょう。でも、「シード期」にはほぼ必要ありません。
広告、コンテンツマーケティング、SEOなど、いかにもスマートにプロモーションできそうな手法が世の中には山ほどあります。
しかし、惑わされてはいけません。必要ない、と割り切ったほうが元気が出て行動力が増すでしょう。
むしろ、直接会って、対面で営業したり交渉したりすることが、ブレークスルー(限界突破)を生む事例があります。直接会って話したシード期のパートナーシップをきっかけに、飛躍的に成長した企業は多くあります。
大半の「〇〇分析」もツカえない
また、プランナーや経営コンサルがよく利用する3C分析、4P分析、SWOT分析などの分析手法も、シード期にはほとんど使えません。これは、これらを作って広めたのがどんな人たちかをイメージすればわかります。
たいていは、超高学歴でしかも分析トレーニングを積んだ集団である「戦略コンサル」と呼ばれる企業が、大企業の一部である事業を対象に、よく使っていた手法を、本に書くなどして広げたものです。
スタートアップのシード期の状況と重なるようなテーマがほとんどなさそうなことは感覚的にわかります。
いらないもの3)データ活用
データ活用も、シード期には考える必要はありません。
「ビッグデータ」と言われるその言葉通りです。
ビッグ、つまり、大量に集まらない限り、データは使い物にならない、というのが現代のコンピュータ・テクノロジーの特徴です。
人間の頭で処理しきれないほど大量のデータを処理してまとめられるのがメリットですが、大量に集まらないと意味をなしません。
ただし、データを握ったものが最後には勝つの法則
ただし、データを握ったものが最終的に勝つのが昨今の法則です。
つまり、いつかはデータを握って勝つことを夢見ておく必要はあります。
ビッグデータ活用の古典的お手本事例「Nest」
このブログでは、「Nest」の事例を紹介したことがあります。
採寸データを集めまくる「ZOZOSUIT(ZOZOスーツ)」
最近よく話題になる「ZOZO」社の事例でいえば、「ZOZOSUIT(ZOZOスーツ)」もデータをつかんだものが勝つことを意識しながら展開しているビジネスです。
この記事に、前澤社長のコメントが載っています。
現在は、身長、体重、年代、性別を打って(入力して)いただくと、このたった4つの項目だけで、あなたにはこれがいいんじゃないかという最適サイズを出すんです。
「ZOZOSUITとPBの失敗理由と対策について、前澤社長はアナリストにかく語りき(ほぼ全文記録)」より引用
このために、「ZOZOスーツ」を無料でばらまいて巨大な投資をしながらデータを集めた、ということになります。
Win-Winの資金調達「BASE」の金融業
「BASE」が始めた金融業も、「データを握ったものが勝つ」の事例と言えます。
EC店舗の売り上げなど詳細なデータを抱えているから、「このECショップにどこまで貸してもいいか」がかなりの精度で判断できるようになった、というわけです。
「BASE」でショップをやっているだけで、ショップの運営者は何の手間もなく資金調達ができ、「BASE」側は利息にあたる料金がプラス・アルファの収入となる、Win-Winの仕組みです。
まとめ
グロース期には必要になるが「シード期にはいらないもの」を3つに絞って取り上げました。
お役に立てば幸いです。
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