「ユーザーはさぁ、もっとカンタンにやりたいんじゃない?」
「いやいやもうかなりシンプルですよ、社長。」
「それと、もう少し・・・字が大きいほうが読みやすいよ。」
「(それって老眼なだけじゃ・・・)」
ユーザーを明確にする手法のひとつとして、「ペルソナ」を取り上げます。
「ペルソナ」とは
我々の「ユーザー」は、何を思い、どのような行動をしているのでしょうか。何歳で、どこに住んでいて、どういう趣味をもっているのでしょうか。
単に「ユーザー」といっても、本当にいろいろなヒトがいます。日本国内でおさまるならまだしも、ネットのサービスを作ると世界中の人々を相手にすることができます。いったいどこのどういうヒトに向かってサービスしているのか、作る側がわかっていないと、迷い悩むことになってしまいます。
「ペルソナ」とは、
ターゲットとされる架空の人物・人格をつくり、設計や判断の基準とする手法。
「ユーザー」「お客様」のことを考えるために
いわゆる「ユーザー」はどういうヒトなのか、自分たち・我が社のサービスにとっての「お客様」は誰なのか、どういうヒトなのか、を考えます。
ビジネス・商売をやるにあたって、「これがほしいだろう」と思ってやるのですから、お客様のことを我々はよく知っているはずである、ということになるのです。この当然の前提を疑いましょう、というところがスタートポイントです。
ペルソナを考える例:スマホアプリをつくるとき
我々は本当にユーザーのことを知っているのでしょうか。たとえば、スマホアプリをつくる場合、ペルソナでは、次のような項目を1つ1つ決めていきます。
- 年齢
- 性別
- 職種
- 体格(身長や体重など)
- 性格
- 家族構成
- 住んでいる地域
- 出身地
- 生活習慣
- よく使うアプリ
- よく使うお店
- 趣味
- お酒は飲むか
- ネットはどれぐらい使うか
- テレビはどれぐらい見るか
- スマホはどれぐらい使うか
- (今回のテーマ・アイデアに対して):
- 何を課題、不満、不便、不安に感じているか
- 何を達成したいか
- 何を得たいか
- 本音ではどう思っているか
- 周りの人々にどう言っているか
- いまはどのような行動をしているか
などなど・・・
ここまで細かく考えをつめているか、が問われます。
絞り込み、あるいは、優先順位付け
「いろいろなヒトがいるんだから、いいじゃないか。」
そのとおりです。でも、そのなかで、どのお客様に照準を合わせて、どのお客様をある意味で捨てていくのか、を考えることになります。あるいは、誰を優先し、誰の優先度を下げるのか、といってもよいでしょう。
特に、サービスの初期段階の場合、「ペルソナ」をいかにうまく絞り込むかどうかで、その後の成長スピードが変わります。
まずは、仮説をたてて、ユーザーインタビューやアンケート調査などのリサーチをとおして、その仮説が正しいかどうかを検証しながら進むのが、昨今のトレンドです。
名前をつける、顔写真を用意する
「ペルソナ」のキャラがかたまってきたら、名前をつけて、写真を用意します。
なぜこれを行うのでしょうか。
サービス作り、スマホアプリを作るときは、迷いの連続です。画面の構成、説明文やボタンの配置、ボタンの文言の細かいテニヲハまで、気になりだすと止まりません。
その迷ったときの考える基準として「ペルソナ」を活かします。
「○○さんなら、どっちがいいと思うだろう・・・」
つまり、自分の視点ではなく、同僚や上司の視点でもない、ペルソナの〇〇さんの視点から、自分たちのサービスやプロダクト、製品を眺めるのです。
経営書によく書いてある「お客様の立場で考える」が自然に実現でできるのが「ペルソナ」のよいところです。
「ペルソナ」を共有する
「ペルソナ」は目に見える形にして、関係者、チームメンバーで共有されて納得できる状態にします。
そうすると、チームメンバー全員が「〇〇さんはどう感じるか」を考えることによって、
「オレはこう思う」
「いやいや私はこう思う、このはずだ。」
のような押し問答が減っていきます。建設的に合意しながら進むことができるようになるのです。
チームメンバーの視点を合わせる、価値観を合わせる
チームメンバーの視点が等しくお客様を向くことが、組織の大小をとわずものすごく重要です。
チームリーダーの目がどれだけお客様を向いていたとしても、チームメンバーがリーダーや上司など違うヒトに向かっていれば、力がそれだけ弱まってしまい、サービスやプロダクトの品質が落ちていきます。
リサーチ結果から「ペルソナ」を組み立てる
大企業のプロジェクトであれば、リサーチを重ねて現在の調査結果から「ペルソナ」を組み立てていくこともできますが、まったく新しい、世の中にないサービスはあまり調査ばかりしていても意味がないことがわかっています。
また、ベンチャー企業、スタートアップ企業の場合、調査におカネや時間をかけることはなかなかできません。
「リーンスタートアップ」手法では、仮説を立てて、インタビューができるような「MVP(Minimum Viable Product)」をつくります。シンプルで低コストな作業を重ねながら、「ペルソナ」を絞り込んでいくことで、サービスを成功にもっていくのです。
ペルソナの有名事例「秋野つゆ」さん(37歳)
ペルソナの有名な事例として、「Soup Stock Tokyo(スープストック東京)」の「秋野つゆ」さんを紹介します。
「Soup Stock Tokyo(スープストック東京)」 は学生さんなど若い世代にはあまりなじみがないかもしれませんが、駅ナカや駅前のショッピング街を中心に展開しているスープ専門店です。
まさしくこの「秋野つゆ(37歳)」を中心にした客層をがっちりとつかんでいて、外観やメニュー構成もまさしくそのものであることが、 店舗をみるとすぐにわかります。
このインタビューで、「秋野つゆさんは、ペルソナではなくブランドそのものを人にたとえている」とされていますが、世間はペルソナと理解しているようで、わかりやすいペルソナの事例としてよく紹介されています。
まとめ
マーケティング技術としての「ペルソナ」を、おおまかな作成手順とともに、紹介しました。
お役に立てば幸いです。
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