サービスを広げていくために「スマホアプリ」をつくりたい! と思ったら、作り出す前にまずチェックすべきことを紹介します。
これらの記事で紹介されている状況を前提としますが、読まなくてもわかるように書いていきます。
「まずはWebでできないか」と考える
「スマホアプリをつくりたい!」と思ったら、「まずはWebでできないか」と考えたほうがよいです。
つまり、スマホのブラウザ(SafariやChromeなど)で閲覧、サービス提供ができる状態を実現することです。
アプリでなくWebで実現することのメリットはいくつかあります。
スマホアプリ用の言語やライブラリを学習しなくてよい
スマホアプリ用の言語やライブラリ(Objective-CやSwift、Kotlin、Java)に慣れ親しむ必要がありません。
当たり前ですが、時間の短縮という面ではとても大きいメリットです。
自分たちでできないからと、外注する費用なども必要ありません。
見た目はほぼ変わらない
スティーブ・ジョブズがiPhoneを発売し、スマホを世に送り出した当初から、スマホのブラウザはとても高性能で、品質は高かったのです。
特に、見た目、ユーザーインタフェースでは、できることがアプリと変わりません。
Web開発ではスマホが登場する前から、「SPA(Single Page Application)」という概念があり、最近あまり言われなくなりましたが「Webアプリ」という言葉もありました。Webだけで「アプリ」を実現する考え方は意外と昔からあります。
アプリでなければできないことがどんどん減っている
そうはいっても、アプリでなければできない、Webではできないことがあります。
しかし、Webでできないことが年々減っています。Webの標準化がどんどん進んで、アプリでなければできないことが減っていきました。
たとえば、「プッシュ通知」です。
最近は、パソコンでみていてもプッシュ通知を促すページが多くなりました。
あるいは、GPSです。
スマホの位置情報を取得することもWebでできるようになっています。
カメラ起動を始めとした、いろいろなデバイスの起動・利用も、できるようになりました。
Webでいったん実現すれば、アプリ実現のハードルが下がる
サーバ側の設計に気を使う必要はあるものの、いったんWebで実現しているサービスを、アプリに移行するのは比較的短時間で済みます。
昨今のサービスでは、アプリ側のみにデータを保存することはあまりありません。(特殊な用途ではありえます。たとえば、暗号通貨の秘密鍵保存用途など)
つまり、データはすべてサーバ側にあり、Webで表示・操作するのか、アプリで表示・操作するのか、という違いしかないのであれば、あとは送り出すデータの形式を調整するだけ、ということになります。
審査がない(特に、AppStoreの審査)
実はこれが、Webをオススメする一番の理由だったりします。
iPhone・iOS用スマホアプリの場合、AppStoreに登録・公開されることが、広く利用されるための必須条件です。しかし、この公開のためには審査があります。
この審査に通るのか通らないのか、事前にはまったくわからず、あるいは、どのぐらい時間がかかるかも限定できません。
かといって、サービス展開にあたってiPhone版はほっておく、というわけにもいかないでしょう。特に日本国内では世界市場に比べるとiPhoneの人気が高く、減少傾向とはいえ半分近いシェアがあります。AppStoreの審査に通らないから半分のユーザーを放置する、という決定はなかなかできません。
AppStoreができた当初から、審査が通らなかったり審査に時間がかかったりする問題はありましたが、いろいろな記事を読むと、最近は審査担当のあたりハズレもあるようです。個人的にも、審査が通らず公開をあきらめたケースを昨年実際に見ています。
また、皮肉なことに、審査不合格(Reject)の理由として「Webで実現できるから」という返事が返ってくることもあります。
アプリの登録・配信のためのおカネが必要ない
iPhone、iOSの場合、アプリの登録費用が年間1万円程度、Androidの場合初回に3,000円程度必要です。
Webで実現すれば、これらは必要ありません。サーバ費用は必要ですが、アプリ版を開発する場合にも同じようにサーバは必要です。
アプリにするメリット
Webではなく、スマホアプリにするメリットも当然あります。
プロモーションできる
スマホアプリを公開する一番のメリットは、AppStoreやGooglePlayの中にラインナップとして並ぶことによる、プロモーションの効果です。
彼らが前出ししてプロモーション、ダウンロード促進してくれることもありますし、各種のランキングで上位に入れば、それだけでダウンロードが増えてサービスが広がっていきます。
また、ネット広告には、スマホアプリのダウンロード促進に対応した商材もあります。
課金・集金を代行してくれる
AppStoreやGooglePlayでは、最初からアプリを有料ダウンロードさせる仕組みがありますし、最初は無料でダウンロードさせて一定以上利用する場合や一部の機能を利用するヒトだけ有料にする「フリーミアムモデル」にも対応しています。
ユーザーは、クレジットカードの登録など決済関係の登録作業を何度もする必要がなく、手間が省けることになり、アプリ開発者側の売上アップにつながります。
ただし、30%程度の手数料をとられる、つまり、ピンハネされます。
Androidでは、GooglePlayを通さなくてもアプリを配信し課金することが可能です。(もちろんそのためのシステムを自分で準備することになります)
iPhone・iOS・AppStoreは、他の配信手段がなく30%のピンハネを避けることは絶対に不可能、という仕組みになっています。これはヒドイのではないかという訴訟が起こっているぐらいです。
ユーザーの声を吸い上げる仕組みが用意されている
AppStoreやGoogle Playには、ユーザーが投稿できる機能があります。
iPhoneやAndroidのユーザーは、評価の★(1個から5個の5段階評価)をつけて、コメントを投稿することができます。
これらの機能を自前で準備してどんどん投稿してもらうところまで利用されることは、非常に難しいです。
実際に投稿してくれるのは一部のユーザーであっても、iPhoneやAndroidを持っているヒト全員がアクセス可能で、他のアプリで投稿した経験のあるユーザーがすでにたくさんいる場が提供されることは、非常に大きなメリットです。
スマホの性能をギリギリまで使う場合
スマホの性能をギリギリまで使ってパフォーマンスを出すことが必要な場合、アプリのほうが有利です。
たとえば、スマホの描画性能をギリギリまで使う3Dゲームは、Webでの実現が不可能ではないものの、いわゆるネイティブアプリのほうがパフォーマンス・スピードを出すことができます。
待ち受けする場合
電話やSMSのように、ずっと待ち受けし続けるアプリは、Webでの実現は困難です。
また、ユーザーの操作なく、GPSで位置情報をずっと取り続けるようなものも同様です。
たとえば、「LINE」や「Skype」の他、メッセンジャー系のアプリがこれに当たります。地図アプリ、あるいは、カーナビなどリアリタイムに道案内をしてくれるアプリ、あるいは、「ポケモンGO」などの現在の位置情報を核としたゲームも、Webで実現することはかなり難しいです。
まとめ
「スマホアプリをつくりたい!」と思ったときに、Webで実現するメリットを考えながら、スマホアプリのメリットをまとめました。
メリットの裏返しがそのままデメリットですので、わかりやすくするために、あえてデメリットを書きませんでした。
お役に立てば幸いです。
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