ホームページ・Webサイトを支えている技術には、HTMLやCSS、JavaScriptなどがあります。これらの仕様は、標準化する団体があり、みんながその団体の決めた基準に従っています。
一方、みんなそれぞれが自由につくったほうが技術が発展するのではないか、という考え方もあります。
今回は、なぜ標準化するのか、みんなが標準に従うとなぜよいのかについて、コメントします。
「W3C」:事実上の世界標準を決める団体
2018年現在、HTMLの標準となっている「HTML5」という仕様を決めたのは、「W3C:World Wide Web Consortium」という組織です。
事実上、世界標準規格を決めていますが、強制力はありません。これに従わなかったら罰せられる、というわけではないのです。でも、みながこれに従っています。
なぜ、みんな素直に言うことを聞くのでしょうか。
Webページを構成するプレーヤー
Webページは、おおむね次のような人たちが関わります。
- 1)ブラウザをつくるヒト
- 2)ブラウザをつかうユーザー(見る人)
- 3)コンテンツをつくるヒト
- 4)コンテンツをつくるツールをつくるヒト
「1)ブラウザをつくるヒト」と「2)ブラウザをつかうユーザー」 の関係
「1)ブラウザをつくるヒト」は、読み込まれたHTMLをどのように解釈してどういう表示にするかを決めることができます。このタグはこういう表示にする、あるいは、このタグは無視する、ということまで自由です。
しかし、「1)ブラウザをつくるヒト」は、「2)ブラウザをつかうユーザー」の要望や気持ちを無視できません。ユーザーのニーズを聞かなければ、ユーザーは他のブラウザを使います。このように、他社への乗り換えがものすごくカンタンですぐにできるのが、ネットのビジネスやサービスの特徴です。
「1)ブラウザをつくるヒト」のビジネスは、多くのユーザーに使ってもらい受け入れられることで成り立ちますから、独自の考えで好き勝手に表示したり表示しなかったりすることは、ユーザーの利益にならず、ビジネスが傾いていくことになります。
「3)コンテンツをつくるヒト」の状況
たとえば、MicrosoftとGoogleで意見が分かれることはあるでしょう。異なる企業の異なるカルチャーの中では、意見が食い違うほうが自然です。
すると、Microsoftのブラウザではこう表示されるが、Googleではこう表示される、という状況が発生します。実は、一昔前は、実際にこれに似た状況でした。
これは、「3)コンテンツをつくるヒト」にとって、非常にキツい状況です。
たとえば、Aブラウザのユーザーと、Bブラウザのユーザーに同じものを同じように見せようと持ったら、A用とB用の2つを用意して出し分ける、ということになります。コンテンツは同じなのに、Webページとして見せられる形にするときに、2つ作らなければならないのです。
逆に、「3)コンテンツをつくるヒト」が、Aブラウザを支持してBブラウザでは見れなくてもいいや、という判断をしたとします。すると、もしこの「3)コンテンツをつくるヒト」が巨大な媒体力をもってユーザーを大量に集めた場合、Bブラウザの立場は危うくなります。
これはユーザーの利益にならない、つまり、ブラウザを選ぶ権利はユーザーの手元に残そうよ、ということでもあります。
「1)ブラウザをつくるヒト」が一定の範囲内で標準に従っていれば、「3)コンテンツをつくるヒト」は1個つくればOK、ということになり、生産性が上がります。
「4)コンテンツをつくるツールをつくるヒト」の台頭
Webが登場して初期の頃は、HTMLやCSSを、テキストエディターで書いていました。サポートしてくれるツールはあまりありませんでしたので、特にプロの現場ではタグを直接書く手法が普通でした。
しかし、Webページをつくるツール・アプリがどんどん登場して成長し、いまは手書きで書くほうはかなりの少数派になっているか、あるいは、部分的・補助的にタグ等を書くのみとなりました。
ワープロ感覚でWebページをつくるツールも当たり前になり、HTMLやCSSの細かいことを意識する必要もなくなってきています。
よって、「1)ブラウザをつくるヒト」が標準に従えば、「4)コンテンツをつくるツールをつくるヒト」の対応範囲も1個になるわけです。
電源プラグ、コンセントとの比較
身近な例でいうと、コンセント・電源プラグの状況が似ています。
コンセントを各メーカーで自由に作っていたら、コンセントをさされる側、つまり、住宅側や電源アダプタメーカーはそれぞれのメーカーに対応したコンセントを作らなければならなくなります。ユーザーの利便性や各社の対応コストを考えると、みんなで標準規格に従っておいたほうがよいのです。
しかし、コンセントの場合、国によって標準が異なります。これが超不便なことは海外旅行をすればすぐにわかります。
インターネットは、世界規模で同じようにつながるネットワークとして台頭しましたから、世界規模で標準化する必要があったわけです。よって、前述の「W3C」は世界規模・各国各社をメンバーに入れた組織としてつくられています。
まとめ:自分だけでなく、みなが幸せになる構造
インターネットを支える技術は、こういう標準化の思想の上に成り立っている、とも言えます。この考え方を一般に「オープン」と表現します。
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