企画書をつくって、プランニング、企画、提案を行うときの、強力なツールとして「戦略ピラミッド」と呼ばれる考え方を、紹介します。
この戦略ピラミッドは、応用範囲が広く、企画を組み立てて実行していくときにとても有用です。
戦略ピラミッドの構造
企画、プランニングのパターン分けや整理の手法として、ピラミッド構造が描かれて利用されることは多いです。また、その段数や定義付けにもいくつかの説・主張があり、おそらくは企画対象の企業や業界によって少しずつ考え方に違いがありそうです。しかし、大まかには一致しています。
私が学び、10年以上に渡って実際に利用してきたピラミッド構造は次の5段で構成されます。
- 理念
- 目標
- 戦略
- 戦術
- 業務
そして、次のようなピラミッド型の図を利用します。
1つずつ、コメントします。
1)理念
ピラミッド構造を企業全体にあてはめる場合、「理念」は、経営理念、ミッション、フィロソフィーなどと呼びかえることができるものです。社会全体、あるいは、世界全体へどのような影響を与えていくのか、その大きな枠組みの中での役割は何なのかを表します。
企業数としては大半を占める中小規模の事業では、創業者や経営者の「志」と同一のものとなっているケースが多いでしょう。
プロジェクトや企画などの単位でこのピラミッドを当てはめるときには、「理念」は「コンセプト」と言い換えてもよいものです。
2)目標
「目標」は、その上位にある「理念」を実現するために達成する目安、理念をもう少し具体的に言い換えた指針となるものです。
目標には2種類あります。
- 「定性目標」= 数字で表せない、状態、状況、行動内容などの目標
- 「定量目標」= 数字で表された目標
定性目標にも定量目標にもメリットとデメリットがあり、たとえば、すべて数字に変換して何がなんでも達成を目指せ、というやり方が必ずよい結果になるわけではありません。
「目標」は、これが達成されれば理念の実現に一歩近づく、あるいは、理念が実現されると、組織全体が納得することで強力な役割を果たしていきます。
3)戦略
「戦略」とは、「目標」を達成するための、表側に見えない作戦や段取りです。
「理念」や「目標」は、たいていの組織・企業が持っています。
経営理念が大事だ、という思想はかなり浸透しており、規模の大小に関わらず経営理念を立てることが普通になっています。多くの企業がホームページをもって一定の主義主張を伝える場ができたことで、外からわかりにくかった理念がだれにでも見えるようになりました。
「目標」は事業を進めていく上で、程度や意識の差はあれど、自然に持ってしまうものです。「来期は売上10億達成しよう!」「お客様満足度を向上しよう!」などは、特に外部から言われなくとも自然にかかげているものです。
よくある事例
そして、自然な流れにまかせると、たとえば次のような思考回路・行動となります。
- 例1)来期10億の達成目標だから → → → 新製品を出そう
- 例2)お客様満足度を向上させるには → → → サポートセンターを作ろう
間違ってはいません。決して間違ってはいませんし、大事なことなのですが、これらはすべて次の段の「戦術」です。
「戦略」と「戦術」の見分け方【超シンプル版】
「戦略」と「戦術」を見分けるのはとても難しいですが、カンタンな見分け方の1つとして:
- 目に見えない=「戦略」
- 目に見える=「戦術」
という分け方が有用です。新製品も、サポートセンターも、目に見えます。ですからこれは、戦術です。
ホント!? 「戦略」がない組織やプロジェクトがたくさんある
数多くの組織で「戦略」がない、あるいは、「戦略」が何なのかわからない、ということが起こっており、逆に言うと、「戦略」を軸に企画を立てることで、付加価値の高い、びっくりされるプランをつくることができます。
経営書を読むと「事業計画を作れ」とよく書かれていますが、前述のとおり、戦略は表に見えない作戦や段取りのことですので、戦略があるとスケジュールができて自然に事業計画ができるはずです。
「戦略」とは、優先順位をつけること
「戦略」とは、優先順位を付けることだ、と言い換えてもよいです。
ヒト・モノ・カネ・情報などの経営資源は有限です。優先するものと優先しないものを分けて実行することで、効果が出るスピードが段違いに速くなります。
「優先順位を付けよう」と考えることで、市場調査などリサーチを行ったり、社内の業務を分析したり、うまくいくかどうかテストを行ったり・・・これらを行う必要がある、という考えが自然に発生します。
4)戦術
「戦術」とは、行動・実行するための直接的な方針、具体的な手段です。
新事業のアイデアや改善提案はたいてい「戦術」です。
前述の「戦略」と明確に区別します。
「戦略」が欠けていることが多いのでその重要性が強調されがちですが、「戦術」は大事です。
たとえば、起業の初期段階では、「戦略」や「理念」はそれほど重要ではなく、「戦術」や「商売」、どうやってお金をいただくか、ということのほうが大事です。
一つの「商売」が確立して回りだしたときに、さらに大きくするにはどうするか、あるいは、売上の限界と突破するにはどうするか、というときに、社会に貢献する目安となる「理念」が重要になり、短時間で目標に到達するための「戦略」が必要です。
5)業務
「業務」の段は、「戦術」にひもづいて実行される、一つ一つの行動のことを指します。
たとえば、訪問件数を2倍にしよう、笑顔で接客しよう、など具体的な行動や、それらをまとめた業務マニュアルをつくる段階です。
ピラミッドである理由
ピラミッドで表されているのは、下の段にいくほど、バリエーションや内容が増えていくからです。多くの場合、関わる人の数、人数が増えます。
たとえば、いくつかの戦略を実現するために、さらに枝分かれするように戦術がつながっていき、その戦術を実行するための業務がいくつかに分かれていきます。
「いま何の話しをしているのか」に戦略ピラミッドを使う
プレゼンテーションや打ち合わせをするときに、この戦略ピラミッドのどの段の話しをしているのか、明確に意識することが大事です。お互いに何の話しをしているのか意識することで、コミュニケーションがスムーズになります。
また、一度にたくさんの段を扱うことは避けましょう。何のはなしをしているのか、わからなくなるからです。
経験的には、一度の打ち合わせ、あるいは、1つの企画で、二段までに内容を絞り込むと、話しがスムーズになり、企画が進みやすくなります。
前述のとおり、多くの企業・組織では、「理念」と「目標」は存在しますので、「目標」の確認や再定義あたりから入り、「戦略」を軸にして「戦術」までを語る企画提案が、数としては一番多くなるでしょう。
まとめ
個人的に振り返っても、少なくとも億単位の売上を生み出した「戦略ピラミッド」という考え方を紹介しました。キャリアのはじめのころに「戦略ピラミッド」を教えてくださった師匠には感謝せざるをえません。
お役に立てば幸いです。
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