コンピュータやネットの世界では、新しい技術がどんどん出てきては消えていきます。
新しい技術はたいてい新しい名前がつけられ、新しい概念として伝えられますが、技術が使われなくなると言葉も使われなくなり消えていきます。
中には、バーチャルリアリティーや人工知能のように、何年か何十年かおいて復活してくるキーワードもあります。
今回は、広まる途中で意味が変わっていった言葉を2つ取り上げます。
誤解が広がる 「インターネット」
「インターネットとは?」ととわれると、おそらく専門家であればあるほど、言葉につまってしまいます。ざっくりイメージでいうと、
「あぁえっと、Internet Explorerとかブラウザでみれるアレでしょ。」
最新のWindows10からは「Edge」というブラウザが標準となり、インターネット・エクスプローラーは消えていく運命にありますが、これをつかって「インターネットをみていた」ヒトもたくさんいます。
しかし、結論から言うと「インターネット=ブラウザで閲覧できるもの」ではありません。
インターネットとは、その名も「インターネット・プロトコル(Internet Protocol)」=「IP」という通信の約束事(=プロトコル)があり、この約束を守って通信するネットワークのことです。パソコンもスマホもクラウドも、すべてIPで通信しています。
IPを使って通信しているものは、「ブラウザでみれるアレ=HTTPのコンテンツ」だけではありません。たとえば、電子メールの送信(SMTP)、ファイル転送(FTP)、名前の解決(DNS)などなどたくさんあります。ただし、いま普及しているコンテンツの多くが「HTTP」でやりとりされているので、これを総称して「Webサービス」と呼ぶようにもなりました。
よって、「ブラウザでみれるアレ」という理解はインターネットで実現された機能の一部ではありますが、インターネットではありません。でも、多くのヒトがこの誤解をしたことには理由があります。
Windows95の登場
20年以上前、「Windows95」というソフトウェアが発売され、インターネットが普及する起爆剤になりました。それまでに普及していたWindowsパソコンは、自分で何かインストールしないとインターネットに接続することができませんでした。自分でがんばったとしても不安定で、広く普及するものではありませんでした。
「Windows95」では買ったらすぐにインターネットにつながるソフトウェア、つまり、IP通信ができるソフトウェアが動いていたのです。これが発売され普及することで、「パソコンは普通インターネットにつなっている」という状態になっていったのです。
「Windows95」には当時専門家の間で物議をかもした表示がありました。それがデスクトップ画面の左上、一番よく目につくところに置かれたアイコンです。
「インターネット」というアイコンが置かれていました。そして、これをダブルクリックすると「Internet Explorer」が起動したのです。
よって、「Windows95」をみた多くのヒトが、インターネットをダブルクリックして見られるものが「インターネット」=ブラウザで見るコンテンツがインターネットだ、と思ってしまったのです。
20年の歳月が過ぎ、いつのまにか「インターネット」というアイコンがなくなり、Internet Explorerではなく「Google Chrome」の人気が急上昇して飛躍的にシェアを伸ばし、最新のWindows10では標準のブラウザが「Microsoft Edge」に置きかわって、この「誤解」は消えていきつつあります。
このような形で意味が変わって広まってしまう言葉が、ネットの世界にはいくつかあります。
ついに意味が変わってしまった「ホームページ」
「インターネット」とは違い、広まった誤解が逆に正しくなってしまいそのまま定着する言葉もあります。その代表例が「ホームページ」という言葉です。
「ホームページ」のもともとの意味は、起点になるページ、下層ページをみていてもここに戻ってくればどこにでもいけるページ、あるいは、最初に開くページ、という位置づけでした。
つまり、いまでいうところの「トップページ」に非常に近い意味だったのです。いまでも、トップページに戻るボタンやアイコンに、HOMEと書かれていたり家の形が表示されていたりするのは、この名残でしょう。
いまでは、「ホームページ」=ブラウザで表示されるものなんでも、というぐらいの意味になっています。しかし、主にプロ筋の間では、ブラウザで表示されるのは「Webページ」、「Webページ」の集まったひとかたまりを「Webサイト」と呼んでいるヒトが多数派でしょう。
この誤解を生んだきっかけとなったソフトウェアがあります。それが「ホームページビルダー」です。Windows95と同時期の1996年、日本IBMから発売され、大ヒットしました。ロングセラーとなり10年以上売れ続け、なんといまでも現役です。(スゴイです!)
その名のとおり、「ホームページ」をつくるソフトウェアだったのですが、これでできるのが実は「Webページ」あるいは「Webサイト」だったのです。この製品が特に初心者向けとして大ヒットしたため、「ホームページビルダー」でできるものが「ホームページ」という理解が生まれて普及するのはごくごく自然な流れでした。
いまでは、ホームページ=Webサイト、の意味で使われることのほうが多い印象です。
「新製品、ホームページに追加しておかないとね。」
「うちのホームページ、もうだいぶ古いからスマホ向けにリニューアルしないと。」
普通に使っています。
まとめ
広がっていく途中で意味が変わってしまった代表事例として、「インターネット」と「ホームページ」を取り上げました。
コメント